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講演「選挙に勝つための情報戦略」
講演者:Dorje Brody, Ph.D (Professor, University of Surrey)
略歴:
香港に生まれ、新潟大学にて物理学を学ぶ。その後、ロンドン大学インペリアル・カレッジ博士課程を修了。ケンブリッジ大学応用数理物理学部研究員およびチャーチル・カレッジ研究員、ロンドン大学インペリアル・カレッジにて英国ロイヤル・ソサエティ特別研究員を経てSurrey大学教授。同大学で数理データサイエンス学科の立ち上げを行った。ケンブリッジ・フィロソフィカル・ソサエティの永久会員でもある。研究分野は理論物理学、数理ファイナンス、認知心理学、植物の動態統計を含む応用数理学。
講演概要:
選挙活動が開始されると、世論調査の結果が気になるものである。仮に(アメリカの大統領選挙のように)候補者がAとBの2人おり、今日の支持率がAは45%、それに対しBは55%であったとしよう。これらの数は何を意味しているかというと、仮に今日選挙が行われた場合、候補者Bは(世論調査の誤差を無視すると)55%の票を得るため、100%の確率で選挙に勝つことを表している。しかし、もし選挙が今日ではなく、一年後に行われる場合、これらの数は何を意味するのであろうか。この場合、Bが勝つ確率は直感的に55%に近いと思われるが、今日の支持率と選挙の勝率とはどのように関係づけられるのであろうか。今日の支持率に基づいて未来の選挙の勝率を求めることは可能であろうか。
ところで選挙活動とは、つまるところ候補者(またはそのキャンペーンチーム)が投票を行う市民に対してそのポリシーや、場合によっては個人的な情報を伝えることに縮約される。このため未来の選挙に勝つ確率とは、今日から選挙日までの間に情報がどのように流出するかに依存する。同時にまた多くの有権者が憂慮する個々の事項(税策、教育政策、環境対策、移民政策などなど)に対しての候補者のポリシーポジションなどにも依存する。
そこで有権者が察知する、ノイズを伴う情報及びポリシーポジションをモデル化することで、実は個々の候補者に対して未来の選挙に勝つ確率を、今日の支持率に基づいて求めることが可能となる。この確率は、情報の流れ方に依存するため、どのようにして情報を流したら選挙に勝つ確率を増加させることができるのか、またはポリシーポジションを変化させた場合、それが勝率に与えるインパクトはどうなるのか、といったことを具体的に調べることが可能となる。
本セミナーでは、選挙に勝つ確率を与える公式を導き、それに基づいて情報戦略の変更が勝率に与える影響を紹介する。
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