学生の活動
SDS学部生へのインタビューを行いました
一橋大学ソーシャル・データサイエンス学部が開設され、2023年4月に67人の1期生を迎えました。広報担当の加藤諒准教授が、第1期生のお二人に、志望動機や受験対策、受験生へのメッセージなどをインタビューしました。
■阪本大知さん
学校推薦型選抜で合格。高校時代は軟式野球部に所属しており、高3の夏に北関東大会で準優勝の成績を残した。
■政野美和さん
一般選抜(前期日程)で合格。高校時代は器楽部と茶道部に所属し、子ども食堂でのボランティア活動を企画・運営していた。
■加藤諒准教授(インタビュアー)
「統計学」「会計学」「マーケティング」を利用し、企業との共同研究も進めている。専門はマーケティングサイエンス、ベイズ統計。
【加藤】お二人とも高校では理系だったということですが、一般的な理系の学部ではなく、社会科学との融合を謳っているソーシャル・データサイエンス学部(以下、「本学部」または「SDS」)に出願を決めた理由を教えてもらえますか?
【政野】私がSDSの存在を知ったのは、3年生前の春休みでした。大学の情報を調べるという課題があり、当時気になっていた「情報学部」を調べていたところ、SDSにたどりつきました。ただ、その時には出願することまでは意識していなかったです。
そもそも情報学部に興味を持ったのは、高2の時に学校で開かれたイベントで自然言語処理に関する講演会があり、文系と理系の狭間の学問分野があることを知ったからでした。理系と呼ばれる中にあっても、私は社会が好きだったので、そのような分野に強く惹かれ、文理融合型の学部を調べるうちに情報学部に辿り着いた感じでした。自分の実力で合格できるか不安があり、出願を迷っていましたが、オープンキャンパスに参加したり、学部の情報を調べたりしているうちに挑戦したいと思うようになり、高3の夏頃に出願を決めました。
【阪本】私は元々AIなどに興味があり、情報系の学部に進むことを考えていました。高校時代に、日米のプロ野球球団について選手評価の傾向をデータ分析して調べる、というような研究活動をしていて、その経験を通して、データサイエンスへの興味がますます深まったとともに、データ分析を社会課題の解決に結びつけたいと思うようになりました。
ただ、SDSの存在を初めて知ったのが高3の11月で、それまでは別の大学を志望していました。SDSのカリキュラムを見たときに自分の興味があることを深く学べそうだったのと、データサイエンスと社会科学の両方を学ぶことでより社会課題の解決につながるのではないかという考えがあり、SDSを志望するようになりました。
また、1年次から専門科目を幅広く学べるという特色や、日本で他にはない学部の第1期生になれるという魅力もありました。
【加藤】お二人ともSDSへの志望理由は、自分の興味がある分野について深く学びたかったから、ということですね。出願するにあたり、新設学部ということで情報が思うように集まらなかったなど、不安だったことはありますか?また、どのように試験対策をされましたか?
【政野】やはり、二次試験で出てくる総合問題とはどういうものか、というのは不安でした。サンプル問題が公表されていたので、それを確認し、予備校のSDS対策の講義も受けました。ただ、総合問題の対策は、予備校でも難しそうでした。
もちろん、総合問題以外の対策も必要で、近年英語の出題傾向が変わったため、時間配分について考えました。リスニングが途中で入ってくるので、その前後どちらでライティングを片付けるか、などですね。リスニングはもともと苦手意識がなかったので、大学入学共通テストも含めて特別な対策はしませんでしたが、その代わりライティングが特殊な出題形式だったので、そちらを対策しました。写真を見て自分で文章を書くというような問題がありますが、私はその問題の自由に書いていいというところが好きで、結構楽しく対策できました。英語全体としては、英語ができるだけではなく、例えば文字数制限があるような問題などは国語力というか、語学力が必要だな、と思いました。趣旨をきちんと理解したうえで、自分で言い換えを考えたりしないといけないので。
国語は他科目対策との比重をどうするかを悩みました。点数の割合が低いですし、日によって解ける日と解けない日があるなど、安定しなかったので。古文漢文についても、理系の私は普段やっていない部分で、かつ他の大学の対策とも被らないので、どこまで時間をかけるべきか悩みました。そんな中で、効果を実感した勉強は、夜寝る前に行った漢字の勉強でした。漢字の書き取りは配点が低いですが、問題が最初に出てくるので、それらが書ければ安心できますし、同時にその意味も覚えられるので、知らない熟語の意味を推測できるようになったり、使える語彙が増えたりして、低ストレスでできるいい対策だと思いました。
私の場合は、並行して理系の私立大学の受験対策も行わなければならず、理科の対策もあったので大変でした。
【阪本】私は推薦で合格しましたが、初年度で小論文の形式などが全くわからない状態だったのが特に不安でした。また、前期と後期もSDSに出願していましたが、これもまた前例がないため周りの受験生のレベルもわからず不安に感じていました。出願してからは、SDSのオープンキャンパスの動画を見て、モチベーションを上げるのはもちろんのこと、「教員紹介」の動画を見て、先生ごとに面接で話す内容を検討するなどの対策ができました。
推薦で合格できると思っていなかったため、共通テストが終わってからは前期と後期の試験対策をしていました。総合問題はサンプル問題で対策して、他は他学部と同じ試験内容なので、過去問を解いて対策しました。SDSの存在を知ったのが遅かったこともあり、それまで過去問を解いたことがほとんどなかったため、問題の傾向を掴むのと時間配分を考えるのに苦労しました。
中学の時に2年半ほど外国に住んでいたので、英語はなんとかなると思っていました。ただ、過去問の傾向から、一橋の英作文の問題は慣れておく必要があると感じました。
数学も得意だったのであまり特別な対策が必要だとは思わなかったですが、SDSは数学の配点が高いので、毎日過去問を一回分は解いて、数学力が衰えないようにしていました。
配点は低いですが、苦手だった国語の対策は重点的に行いました。要約の問題と近代文語文、現代文という三問ですが、試験時間に余裕がなく、特に最後に出題される要約については、自己採点が難しく、対策が困難でした。
【加藤】お二人ともしっかり対策されて試験に臨まれたのだな、という印象です。では、実際に試験を受けた感想を教えていただけますか?
【政野】正直に言うと、まず試験が終わってすぐは、「落ちた」と思いました。怖くて解答速報が見られなかったです。理由もなく自分が何か取り返しのつかないミスをしたんじゃないか、という不安を抱えながら帰りました。
落ち着いて振り返ると、国語・英語・数学の出来は、まぁ想定の範囲内でした。ただ総合問題はサンプル問題から傾向が大きく変わったなと思いました。入学後に同級生に聞いてみても、総合問題の出来に自信があったという人はほとんどいないです。
総合問題の問題冊子を開いた瞬間に思ったことは「何これ?」でしたね。大問1は、見たことがないグラフが出てきたりして戸惑いました。よくよく見ていくと、数学Ⅱ・数学B の統計の範囲で出てきた記号があるな、というようなレベルでした。
大問2は、見た瞬間の感想は大問1と同じですが、問題を読んでいたら、最初の方の問題は計算をすればいいことがわかり、最後の方は解法のイメージはつきつつも、それを説明するのが難しく悩みどころでした。こうかな?と不安になりつつ解答を書くことはできました。それでも手ごたえは薄かったです。
大問3は見たことはないものの取り組めるかなという問題で、私はパズルを解く感覚で取り組みました。この問題はいけたなと思いました。
試験時間終了後、解答用紙を回収される際に、他の人の書き込み具合を観察したんですが、みんな大体私と同じ感じだったので、ほっとしました。「できた」という手ごたえはなかったですが、これぐらいでちょうどよかったんじゃないかな、と思いました。
もしこれから1年後に受験するという仮定で総合問題の対策をするなら、まずは数学Ⅱ・数学Bの統計の範囲を勉強します。さらに、論理的な文章を日頃から読んで、自分で文章を作る能力を身に付けたり、数学をちゃんと使いこなせる能力を身に付けようと思います。
入学後に、入試の得点開示結果を見てみたら、自分が思っていたよりも点数が取れていて良かったです。
【加藤】ありがとうございました。では、推薦を受けた阪本さんの試験の感想はどうでしたか?
【阪本】まず、試験当日にわかったんですが、二次試験に進んだのが私1人だったということが衝撃的でした。試験監督者2人に対し受験者は私1人だったのでとても緊張しました。
小論文は、A4一枚程度の問題文で、800字の小論文が2題出ました。どちらも短い文章を読んで、それに基づいてAIと人間の関係などについて記述させる問題でした。小論文の対策は全くしておらず、AIについても個人的に興味があるレベルで専門的な知識もない状態でしたが、何とか書ききれて良かったです。
その後、面接があり、試験監督者は2人でした。圧迫面接だったらどうしようと心配に思っていましたが、面接官の2人とも優しく、問い詰められるようなことがなくて安心しました。面接を担当された先生方はしっかり覚えて帰ったので、授業を受けるのを楽しみにしています。
試験が終わった後の帰り道では、面接が好印象だったのもあって、1人しか受けてなかったからこれで落とされることはないだろう、と思いましたが、推薦の枠はあるけど合格者0人という大学もあると聞いていたので、不安と大丈夫だろうという気持ちが混ざっていました。
もし、来年もう一度試験を受けるとしたら、共通テストの対策をもっと早いうちからやって、足切りを安心して突破できるようにしますね。推薦の共通テストの足切りは一般よりも少し高いので、それが突破できないと小論文や面接の対策が無駄になってしまいます。小論文対策としては普段から情報系の知識を蓄えるだけでなく、様々な小論文の問題を解いて、構成や書き方に慣れておくといいと思います。
【加藤】ありがとうございました。さて、そのような試験を見事に突破し、入学したお二人ですが、入学から2ヶ月が経ち、学生生活にも慣れてきたころだと思います。SDSの授業を受けてみてどうですか?
【阪本】1年次は導入科目で、知見を広げていっているところですが、取り掛かりやすいのは高校の情報の授業の発展版のイメージの「AI入門」や「情報リテラシー」です。
【政野】:私もプログラミングをやりたいと思っていて、高校時代に独自に勉強できる方法を探していたこともあったので、AI入門は楽しいですね。今はプログラミング言語のPythonを勉強しています。
【阪本】私の高校の情報の授業では1年生ではプログラミング、3年生では情報リテラシーを学ぶというカリキュラムだったのと、自分が独自にPythonを勉強していたのもありますが、とっつきやすいです。
【政野】今は基礎的なコード入力、関数の作成等をやっていますが、進みが早いというわけではなく、高校の情報の時間にやったことをゆっくりしっかり学びなおしつつ新しいことも勉強しているので初めてやる人もついていけるペースだと思います。みんなで楽しくやっています。
【加藤】楽しく授業が受けられていて良かったです。では、最後に、受験生に向けてメッセージをお願いします。
【政野】新しくできた学部ということで、私たちと今から入ってくる人たちでこれから基礎を作っていくことになります。そういった環境で学びたい人を待っています。
受験勉強は本っ当に大変だと思いますが、頑張ってほしいと思います。 オープンキャンパスの動画を見るなどして、ここに入りたい、と思うモチベーション維持もしつつ乗り切ってください。
【阪本】出願先で迷っている人もいるかと思います。特にSDSが他大学と違う点は、一学年の人数が少人数なので、先生方との距離も近く、すぐに相談に乗ってくれる環境であるところです。先生たちも、出来たての学部なので、積極的に新しいことを取り入れてくれますし、サポートが手厚いです。そんな風に自分で考えて動ける機会が多いところがSDSの大きな魅力です。私たちと一緒にSDSの伝統をつくっていく仲間が増えることを楽しみにしています。